2010年12月3日金曜日

脳脊髄液減少症の研究足踏み 遠のく望み 治療指針先送り

 交通事故などの強い衝撃で髄液が漏れ続け、慢性的な頭痛やめまいを発症する「脳脊髄(せきずい)液減少症」の診断、治療のガイドラインづくりが遅れている。厚生労働省の研究班が2009年度内の策定を目指していたが、症例不足で先送りされた。治療への健康保険適用や負担軽減策は遠のき、患者に不安が高まっている。(泉支局?片桐大介)

 「君の病気のことは、僕にはよく分からない」
 脳脊髄液減少症を患う宮城県富谷町の無職石川真由美さん(36)は、元夫の言葉が頭から離れない。

 石川さんは07年2月、車で通勤中に左側から車線変更してきた車に衝突された。目立った外傷はなかったが、2カ月後から強い頭痛、めまい、記憶力の減退に襲われた。仕事を辞め、家事もままならなくなった。
 夫婦の関係にも、すき間が生まれた。悩み苦しんだ石川さんは昨年12月、離婚した。

 身内にさえ症状を理解してもらうのが難しい現実。事故の加害者側の保険団体は「症状と事故に因果関係はない」と治療費の支払いを拒否している。元夫からの養育費と実家の援助で2人の子どもを育てながら、治療費を捻出(ねんしゅつ)する。

 石川さんは「病気の研究が進み、安心して治療を受けられる世の中になってほしい」と願う。
 厚労省は07年、脳神経外科や整形外科などの専門家が参加する脳脊髄液減少症の研究班(班長?嘉山孝正山形大医学部長)を設置。体系的な診断、治療のガイドラインづくりに着手した。

 研究終了年度の09年度、集まった症例は70例で目標の100例には届かず、指針は策定できなかった。研究は10年度以降も継続されることになった。

 研究班の佐藤慎哉山形大教授(脳神経外科)は「患者の症状、治療経過を限定したため、該当者が少なくなった。10年度内には指針の検討結果を出せる」と説明する。

 治療には、硬膜の外側に患者自身の血液を注射して髄液漏れを防ぐ「ブラッドパッチ」が有効とされるが、健康保険は適用されない。入院費を含め1回約30万円かかる。

 03年から脳脊髄液減少症の治療に取り組む国立病院機構仙台医療センター(仙台市宮城野区)の鈴木晋介医師は「患者負担が大きいだけでなく、保険適用外の治療を嫌がる病院は多い。保険が認められれば治療する病院も増える」と指摘する。

 ブラッドパッチの保険適用は、早くても2年後の診療報酬改定を待つ必要がある。「減少症自体を認めない医療関係者がまだ多い」(鈴木医師)のも現実で、治療機関は一部に限られる。

 東北脳脊髄液減少症患者の会の及川恵美代表は「患者の負担が早期に軽減されるよう、国の支援策を強く要望したい」と話している。

[脳脊髄液減少症]脳への衝撃やストレスによって脳や脊髄を覆う硬膜に穴が開き、内部を満たす髄液が漏れて脳が沈む。脳や神経が下に引っ張られ、慢性的な頭痛や疲労など多様な症状を引き起こす。国内の患者は10万人以上との見方がある。低髄液圧症候群とも呼ばれる。


引用元:売買 不動産 | 松山市

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